冷凍療法の衝撃はしばらく続いた。しかし、またいつもの様に日常に埋没しているうちに、滝行や冷凍療法の衝撃はしだいに薄れていった。おいらは確かにあの時に変わった、と感じていたのだが、何が変わったのか?実際は何も変わっていないようで、つまり、目に見えて何が変化したのかが分からなかったのだ。
よって、確実な変化を目標としておいらが次に考えたのは、「体質改善」だった。
正直に言うと、おいらは「健康」ということの意味が、生まれてこの方たったの1度も理解したことがなかった。おそらく、もともと健康な人にとっては、いったい何を言っているのか、想像さえつかないだろうが、物心ついたときから不健康で、いつも体のどこかしらに不調がある人間というのは、意識はいつも体の不調の部位に向いているものだ。これによって、体調の悪い人や、持病のある人は、気持ちが常に内向きになってしまうのだ。身体の痛みや苦しみは、次にマイナス感情を生み、気がつといつもマイナス感情と一緒にいるほうが多くなるのだ。
それで、今回は「食養生」に挑戦することになった。きっかけはこれも杉さんの紹介で、神戸で食養生やら陰陽五行やらを教えているとみた先生を紹介してもらったことだった。
おいらは、これも正直に言うと、セミナーやら講習会というものが大の苦手だった。小学校の頃より、人の話を聞くことが不得意で、授業が始まるとほぼ1分後には、眠りに入っていることがほとんどだった。なぜかというと、多くの場合、話が面白くないからで、おいらが面白いとも思える話を聞かせてくれる先生にはめったにお目にかかることができなかった。
で、今回もそれほど期待してはいなかったのだが、とみた先生の話は、おいらの想像をはるかに超えて面白かった。初めて会ったその日においらのこころをわしづかみにした。ただ、その話の内容はとんでもなく長くなってしまうのでここでは省く。そんなわけで、それからしばらく、先生の追っかけのように、各地でのセミナーやら、時には合宿などにも参加した。それから3か月、おいらの食生活は100%変わった。
まず、2台の発芽器を買い込み、それで毎日玄米を発芽させ、朝、昼、晩、主食を発芽玄米に変えた。極力、砂糖を控え、ひたすら玄米のおにぎりを食べ続けた。
3か月が過ぎたころ、おいらの体には確かな変化が現れた。頭はかなりスッキリし、なぜか記憶力が上がっていた。夜は熟睡できるようになり、朝は目覚めがさわやかだった。それよりも何よりも、身体の様々な不調が消えて、力がみなぎっていた。知り合いの連中は、またいつものマイブームで、すぐに飽きるだろうと噂していたのだが。
5か月が過ぎたころ、おいらは生まれて初めて、自分が「健康」になったことを実感したのだった。もう自分の中に自覚できる不協和音は無くなっていた。実際は、普通の人が、とっくに到達している地点にようやくたどり着いただけだったのだが、おいらとっては、人生で初めての境地といっていいものだったのだ。
ここで、おいらが学んだ大事なことはたった1つだ。それは、毎日食べているものが、自分の身体になっているという、極めて当たり前の事実だった。しかし、おいらは、おそらく多くの人もまた、その自覚がないままに、毎日何かを食べ、それがやがて確実に体の一部になると本気で信じてはいないのだ。
もし、それが分かっていたなら、人は必ず食事を本能ではなくて、意思でコントロールするだろう。しかし、多くの人は病気になったらはじめて食事を変えるが、病気が少しでも良くなればまたもとの食生活に戻ってしまう人も多い。おいらは、食べ物は薬と同じということにはじめて気づいたのだった。
しかし、健康体になって改めて、今までの自分の考え方がいかにマイナス思考だったかということに気がついた。
次回からはヴィパッサナー瞑想からフラーワーレメディへ、そして、おいらの出会ったネガティブな人々をテーマにお話しします。